ジャーナリズムXアワード

受賞一覧

2020.07.29

第1回ジャーナリズムX(エックス)アワード受賞案件

2019年に発表された成果物や取り組みを対象とする、第1回ジャーナリズムX(エックス)アワードの受賞案件が決定しましたのでお知らせします。

 

ジャーナリズムX賞(大賞)1件 賞金100万円

『独立』『非営利』『探査ジャーナリズム』という船に乗って市民社会の公正さを促進するための、ジャーナリストによるジャーナリズムのムーブメント
(受賞者:NPO法人 ワセダクロニクル)

 

ジャーナリズムY賞 1件 賞金30万円

ニッポン複雑紀行
(受賞者:認定NPO法人 難民支援協会)

 

ジャーナリズムZ賞(選考委員奨励賞)4件 賞金5万円(応募順)

ジャーナリスト志葉玲の命で語れ!日本と世界
(受賞者:志葉玲〈フリーランスジャーナリスト/Yahoo!ニュース個人オーサー〉)

 

The Informed-Public Projectによる沖縄の米軍基地環境問題の「知る力」プロジェクト
(受賞者:The Informed-Public Project)

 

せやろがいおじさん
(受賞者:榎森耕助/SITY株式会社)

 

IDEAS FOR GOOD
(受賞者:ハーチ株式会社)

※ジャーナリズムZ賞は、募集時には賞金10万としておりましたが、該当する受賞案件が当初予定の1件から4件に増えたため賞金金額を変更いたしました。

 

受賞コメント

 

NPO法人 ワセダクロニクル

NPO法人 ワセダクロニクル
  若く多彩なメンバーがワセクロの原動力だ

私が住む東京・赤羽の飲み屋さんには、ワセクロのステッカーが貼ってある。店主には「おい、真実のために突っ込んでいけよ、頼んだよ」とよく喝を入れられる。飲み仲間がワセクロの活動を知り、その場で次々に寄付してくれたこともあった。

乃木坂のレゲエクラブからはこの春、対談の依頼があり、DJブースの前で語り合った。レゲエミュージシャンは、「ジャーナリズムが大本営発表では駄目だ」と憤慨し、「腹をくくり大きなものに挑むのがレゲエとジャーナリズムの共通点だ」といった。

そして今回、ジャーナリズムXアワードをいただいた。赤羽の飲み屋さん、レゲエクラブと同様、本賞には「ジャーナリズムを市民の手に取り戻す」エネルギーが脈打っている。電通、製薬会社、北朝鮮といった巨象を相手に、アリンコみたいな私たちが満身創痍でも挑めるのは、このエネルギーをもらえるからこそだと思う。

メンバー一同、受賞に心から感謝している。第1回の受賞者であることがなお嬉しい。本賞に取り組むみなさんと共に、市民が支えるジャーナリズムを前進させていきたい。
(編集長・渡辺周)

 

認定NPO法人 難民支援協会

認定NPO法人 難民支援協会

「ニッポンは複雑だ。複雑でいいし、複雑なほうがもっといい。」をコンセプトに、日本でたしかに暮らしてきた移民や外国にもつながりを持つ方々の声を丁寧に聴き取り、伝えることを目指してきました。「共感を呼び覚ます」という評価とともに本賞をいただけたこと、心より嬉しく受け止めています。これまで私たちを信頼してお話を聞かせてくださったお一人おひとりに、記事を一緒に制作してきたライター・写真家の皆さんに、そして発信に共感し応援してくださった読者の皆さんに、この場を借りて改めて感謝申し上げます。

私たちは日本に逃れてきた難民の方々への支援を専門に行っている団体ですが、これからもニッポン複雑紀行を通じて、難民を含め、多様なルーツをもつ人々の暮らしや思いを伝えることで、難民も移民もそうでない人も、誰もがともに暮らせる社会づくりに寄与していきたいと思います。

 

志葉玲

志葉玲
  志葉玲近影

このたびは素晴らしい機会に恵まれたこと、私の発信を評価していただいたこと、心より感謝いたします。Yahoo!ニュース 個人は、専門性を持った書き手が社会の課題を解決するための提言を行うとの趣旨でYahoo!ニュースが運営しているもので、私は環境、人権、戦争と平和というテーマで記事を書いております。極めて重要な問題でありながら、主要メディアがあまりとりあげないテーマ、或いは政治や経済において既得利権を握る側の主張が声高となるテーマにおいて、純然なジャーナリズムや社会・環境正義の視点からの記事を、国内最大級のインターネットニュース配信サービスであるYahoo!ニュースで発信できることが、今の私の最大の強みです。特に日本の難民受け入れの閉鎖性に対する追及は、大手メディアの記者達にも一定の影響を与えたと自負しております。今後とも、ジャーナリズムとは何のためにあるのかという命題の下、より一層の切磋琢磨を続けてまいる所存です。

 

The Informed-Public Project

The Informed-Public Project
  The Informed-Public Project代表・河村雅美

数多くのエントリーの中から評価をいただき、感謝申し上げます。

受賞案件の「『知る力』プロジェクト」は、米軍基地問題で、日米地位協定やフェンスという壁の外で、沖縄は最大限の努力をしているのか、という自省の念から立ち上げたプロジェクトです。情報を持つ市民という主体が、権力に抗するために不可欠と考えたからです。調査報道的な手法を採用していることが評価されていますが、公開資料を巡回し、疑問があったら行政に電話をする、というところから調査は始まります。市民にも応用可能な手法であることを知っていただきたいです。

また、調査の成果を既存のメディアとの連携で行政や市民に知らせていく、という私たちが採っている手法は、メディアの私たちの活動への理解や、初動の調査をした者への敬意という土壌があって可能なものです。その土壌をつくることも実は困難な過程がありました。私たちの活動がマスメディアと新しいジャーナリズムが対抗的なものとならない文化を育む重要性を示す例となればとも思っています。

 

株式会社SITY

せやろがいおじさん
  せやろがいおじさん

ふんどし姿で叫ぶ、という奇天烈なコンテンツにこのような賞を頂きまして、ただただ恐縮です。情報やエンタメコンテンツが溢れる世の中で、いかにして社会の課題をより多くの人に届けるか?というのは今後のジャーナリズムの大きな課題ではないでしょうか。多様性が叫ばれる昨今、「届け方」の多様化も重要だと感じます。アプローチの方法は多ければ多いほど、より広く、多くの人に社会問題を知らせ、問題意識を喚起することができます。我々は、「コメディ」をベースとして、今後も社会問題を発信していきます。我々の発信を受けた方が、また新たなアプローチで社会問題を発信してくれるようなことがあれば、嬉しく思います。

 

 

 

 

ハーチ株式会社

IDEAS FOR GOOD編集部メンバー
  IDEAS FOR GOOD編集部メンバー

このたびはジャーナリズムXアワードZ賞をいただき、誠にありがとうございます。IDEAS FOR GOOD編集部メンバー一同、大変うれしく、光栄に思っております。IDEAS FOR GOOD では今後も社会課題の解決につながるクリエイティブで前向きなアイデアを世の中に発信することで、読者の皆様や取材先の皆様、そしてその先にある社会の未来をよりよい方向へと変えていくソリューション・ジャーナリズムの新たな形を模索していきます。また、ウェブ上の記事だけではなくポッドキャストや動画、空間、体験ツアーなどメディアとしての表現の幅を拡張していきながら、読者の皆様と共により多くの社会課題解決アクションを創発していきたいと思います。引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。
(IDEAS FOR GOOD編集部一同)

 

選考を終えて

 

記念すべき第1回の本アワードに多くのご応募をいただき、本当にありがとうございました。自薦・他薦による68件ものエントリーから、一次選考で注目された19件を二次選考向けにノミネートし、その中で特に評価の高いものを上記のとおり授賞対象に選び出すことができました。
 
私たちの呼びかけに応え、新しく生まれ出ようとするジャーナリズムのさまざまな試みが寄せられたことは、本アワードへの大きな期待と受けとめています。選考結果には、その脈動と多様性を反映させるよう努めたつもりです。
 
「市民がジャーナリズムを後押しする」という前例のない挑戦ゆえに、選考過程も手探りでした。Z賞(選考委員奨励賞)の件数と賞金額が告知と異なるのも、初回ならではの柔軟な対応の一端です。以下、授賞に込めたものを要約します。

 

【X賞】
「独立」「非営利」「探査ジャーナリズム」という船に乗って市民社会の公正さを促進するための、ジャーナリストによるジャーナリズムのムーブメント
〈NPO法人 ワセダクロニクル〉

日本における非営利の調査(探査)報道を牽引するジャーナリスト組織として、国内外のステークホルダーと協働で幅広い活動を展開。2019年には、国際連携を含む8つのシリーズ(連載)企画や、国税使途検索システム「JUDGIT!」の共同制作に加え、連載をきっかけとする強制不妊被害者補償法成立、韓国での企業幹部贈賄捜査、共同制作の「製薬マネーデータベース」を活用した文科省による調査と、同省から各大学に対する兼業規定・倫理規定見直し要請などの具体的成果ももたらした。アウトプットの量と質、ジャーナリズムとデータベース制作との結合、海外への発信や国際連携報道、比較的若い世代が主役を担う点において、第1回の大賞にふさわしいフロントランナーと認める。

 

【Y賞】
ニッポン複雑紀行
〈認定NPO法人 難民支援協会〉

日本社会の最重要課題の一つである多文化共生について、難民や非正規滞在者、外国籍の子どもたちの学習・生活支援などをテーマとした複数の応募があった。その中で、ウェブメディアとしての器の作り方と、個々の記事の掘り下げ方、そして長文だが読みやすい記事に多くの写真を添えた表現力との相乗作用において、総合評価が頭ひとつ抜け出した。外部から移民・難民問題に詳しい編集者を迎えることでオウンドメディア(団体広報媒体)の枠を超え、これまで届かなかった数と層の人びとに、問題の押しつけではなく共感を呼び覚ますことに成功している。

 

【Z賞】(4件)
「選考委員奨励賞」と別称したとおり、上位2賞には漏れたものの、ジャーナリズムの明日を指し示してくれる点で、どうしても授賞から外せないと判断し、公募案内の1件10万円ではなく4件5万円ずつとした(紹介は応募順)。
 
ジャーナリスト志葉玲の命で語れ!日本と世界
〈志葉玲(フリーランスジャーナリスト/Yahoo!ニュース個人オーサー)〉

環境、人権、平和をテーマとするジャーナリスト個人による頻繁かつタイムリーなオンライン記事配信(2019年は58本)。読者は無料で読めるが筆者には収益が入る既存プラットフォームを活用しつつ、質的に高水準を維持し、しかも若者から中高年層まで世代を超えた訴求力を持つ点に評価が集まった。

 

The Informed-Public Projectによる沖縄の米軍基地環境問題の「知る力」プロジェクト
〈The Informed-Public Project〉

環境NGOでありながら、用いる調査報道的な手法はジャーナリズムそのもの。米軍基地に由来する汚染問題に絞って、ほぼ独力で調査・情報発信(日英)・政策提言・メディア対応をこなし、メディアを通じた訴求は戦略性が高い。研究とアドボカシーとジャーナリズムの融合に新しい可能性を拓いた。

 

せやろがいおじさん
〈榎森耕助/株式会社SITY〉

沖縄の美しい海を背景に、独特の絶叫調とふんどし姿で社会ネタを大胆に斬るというYouTuber/芸人の新しいスタイルを確立し、内容の質と発信頻度においても高水準を維持。従来の媒体や手法では届かなかった人びとを振り向かせ、「ジャーナリズムの壁を突き破る」一例を示している。

 

IDEAS FOR GOOD
〈ハーチ株式会社〉

生活情報と社会・環境問題などに関連する記事を幅広く提供するウェブマガジン。世界中から解決につながるアイディアなどを伝えて、社会活動や体験学習にもつなげる前向きな姿勢で、若い世代のメディア目線とニーズに合致。記事の質と量、訴求力、デザイン性ともに高評価を得た。

 

なお、第2回ジャーナリズムXアワードは2020年内の成果物を取り上げて、来年初めには公募予定です。予断を許さない新型コロナウイルスの世界的感染拡大など、これまで以上に激動の時代に入り、多層・多様で力強いジャーナリズムの必要性もますます高まるばかりでしょう。本アワードをさらに前へ進め、自薦・他薦での応募だけでなく、本基金自体への寄付その他にもより多くの参加をいただくことで、「市民がジャーナリズムを後押しする」仕組みを日本社会に根づかせていきたいと思います。ぜひご協力、ご参画をお願いします。

 

ジャーナリズム支援市民基金 第1回ジャーナリズムXアワード選考委員一同

 

上記のほか二次選考にノミネートされた案件(応募順)

 
『大阪ミナミの子どもたち 歓楽街で暮らす親と子を支える夜間教室の日々』(彩流社)
〈金光敏/NPO法人 コリアNGOセンター/Minamiこども教室実行委員会〉

 
メディア・ミックスによるニュー・ジャーナリズムの地平 ~子ども虐待防止策を市民自身が作り出す直接民主的アクション
〈今一生〉

※応募時の添付資料を応募者本人の承諾を得て掲載しております。

 
ドキュメンタリー映画『アリ地獄天国』
〈土屋トカチ〉

 
民の声新聞
〈鈴木博喜〉

 
ドキュメンタリー映画『i―新聞記者ドキュメント―』
〈「iー新聞記者ドキュメントー」製作委員会〉

 
国会パブリックビューイング
〈国会パブリックビューイング〉

 
「記憶の解凍」ARアプリ
〈「記憶の解凍」プロジェクト〉

 
演説動画まる見えマップ
〈株式会社チャリツモ〉

 
「廃炉作業に新資格の外国人労働者受け入れ決定」の一連の報道
〈朝日新聞社会部・青木美希〉
マネー現代(講談社)
論座(朝日新聞社)
YAHOO!ニュース
 
ファクトチェック・ネットワーキング・システム
〈NPO法人 ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)〉

 
ローカルライター講座
〈NPO法人 森ノオト〉

 
秘密主義のもと進められる自由貿易協定に対する、市民社会による取材・分析・提言
〈NPO法人 アジア太平洋資料センター(PARC)〉