ジャーナリズムXアワード

ブログ

2022.08.19

戦争とプロパガンダを考える

 

今年6月に発売された『帝国日本のプロパガンダ――「戦争熱」を煽った宣伝と報道』貴志俊彦著(中公新書)は、1900年から50年ほどの間に、日本が関わった戦争・紛争を、当時の報道と宣伝がどう表現していたかを扱った本です。以下、「Bookウォッチ」の記事「フェイクニュースが煽った『帝国日本』の戦争と破滅」より、本書のポイントをご紹介します。

 

●報道が国を戦争へ駆り立てる後押しをした

 

かつての日本では「戦争」と「国益」の名のもとに、報道機関は独自の取材と判断を停止し、国、そして軍の目線で報道するようになっていきました。国が戦う正当性と、自軍の優勢を強調する報道・宣伝が続いた結果、国民は戦争を支持し、むしろ国を戦争に駆り立てていく役割を果たしました。そして、今の世界においても同様のことが起きていると筆者は述べています。

 

●ビジュアルは「戦争プロパガンダ」の効果を最大化する

 

今日でいう「フェイクニュース」の典型は戦争プロパガンダであり、その効果を最大化するのがビジュアル技術でした。そしてそれは今も変わりません。戦争当事国は、自国の利益になるような誇張や虚偽、隠蔽を行なって発表し、それが報道されて人々に届きます。19世紀から20世紀にかけて発達した写真や映像の技術は、フェイクニュースの効果的な拡散に役立ったといいます。

 

戦時中、日本の大本営が虚偽の発表をしていたことは広く知られていますが、それ以前の日清戦争、日露戦争の時代から、日本だけでなく清国、ロシア、そしてそのメディアが、自国有利のプロパガンダを繰り広げていました。

 

そして中国では、日清戦争当時の「清国は勝っていた」というフェイクニュース(版画の印刷物)が現在、再び拡散されることで、国内で歴史観の修正が呼びかけられ、愛国心の高揚をもたらしたとのこと。

 

●プロパガンダの最後の担い手は民間の報道機関

 

新聞などが軍の戦争プロパガンダに協力するばかりか、自主的に進めて戦争を煽ったのは、読者と広告の獲得につながったからです。軍が主導の総動員体制のもとで、日本の報道各社は破滅への道を進む帝国と一蓮托生となっていきました。

 

本書では、戦争が終わるまでその実相を伝えず、1945年の「敗戦」後は一転して連合国軍総司令部(GHQ)の占領政策のプロパガンダに協力した報道各社の姿も描かれています。

 

▼引用元

 

 

【ジャーナリズム支援市民基金からのお知らせ】

当基金は、2020年にスタートした「ジャーナリズムⅩ(エックス)アワード」の運営などジャーナリズム支援に取り組んでいます。私たちの活動を維持・発展させていくために、皆様からのご支援をお願いいたします。

 

▼ご支援のお願い
https://jxaward.com/donate/