受賞一覧
第4回ジャーナリズムX(エックス)アワード受賞案件
2022年に発表された活動成果や取り組みを対象とする、第4回ジャーナリズムX(エックス)アワードの受賞案件を決定しましたので、お知らせします。
ジャーナリズムX賞(大賞)1件 賞金100万円
(受賞者:辻麻梨子/Tansa)
ジャーナリズムY賞1件 賞金30万円
メディアNPO「Dialogue for People」の組織運営、及び戦争・難民・マイノリティ・人権などをテーマとする一連の発信
(受賞者:特定非営利活動法人 Dialogue for People)
※ 「」 クリックで詳細を表示します。
https://d4p.world/docs/d4p_annualreport_2022.pdf
D4Pフリーマガジン「VOICE OF LIFE」(ボイス・オブ・ライフ)第3号
https://d4p.world/wp/wp-content/uploads/2022/06/vol_03_20220511_fix_web.pdf
【取材レポート】軍事侵攻を信じない父、占領された街に残された家族――ウクライナからポーランドに避難した家族の声)
https://d4p.world/news/16641/
【取材レポート】写真で伝えるウクライナ・キーウ郊外、人々の声(1) —イルピン編—
https://d4p.world/news/16716/
【取材レポート】写真で伝えるウクライナ・キーウ郊外、人々の声(2) —ブチャ・ボロディアンカ編—
https://d4p.world/news/16835/
【取材レポート】写真で伝えるウクライナ首都キーウと日常
https://d4p.world/news/16916/
【取材レポート】「それでも、変化のうねりは止められない」――ウクライナへの軍事侵攻と性的マイノリティの声
https://d4p.world/news/17438/
【取材レポート】「あなたたちと同じ人間」――戦時下を生きる少数民族ロマの人々の声(前編)
https://d4p.world/news/17482/
【取材レポート】誰も拒絶されない、それぞれの可能性を育める社会を――戦時下を生きる少数民族ロマの人々の声(後編)
https://d4p.world/news/17482/
・動画
【現地取材報告】ウクライナ~ウクライナの今をマイノリティの視点から伝える~ Radio Dialogue (2022/6/15)
https://d4p.world/news/17360/
2022年上半期 取材ダイジェスト[海外編]戦争が砕いた日常―人々が今、願うことは(ウクライナ・イラク・シリア他)
https://d4p.world/news/18003/
【取材報告】2022年5月 ウクライナ『望むのは平和な空』-街と心に刻まれた破壊の跡 _Voice of People_Vol.13
https://d4p.world/news/18168/
・フリーマガジン
D4Pフリーマガジン「VOICE OF LIFE」(ボイス・オブ・ライフ)第4号
https://d4p.world/wp/wp-content/uploads/2022/10/vol_04_fix_web.pdf
・書籍
「隣人のあなた__「移民社会」日本でいま起きていること」安田菜津紀著(岩波書店/2022年11月10日発売)
https://d4p.world/store/19163/
【取材レポート】「ネットの存在が神様のようだった」――トランスジェンダー女性の殺害相次ぐイラク北部クルド自治区からの声
https://d4p.world/news/17001/
【取材レポート】「人道はどこへ」トルコの軍事侵攻から2年半、シリア北東部から遠のく支援
https://d4p.world/news/17250/
・動画
【現地取材報告】イラク・シリア~戦禍が日常に落とす影~ Radio Dialogue(2022/6/8)
https://www.youtube.com/watch?v=33KUG-D4594
【エッセイ】「ルーツを巡る旅」、ウトロから海をこえて
https://d4p.world/news/18399/
【取材レポート】虐殺とタブー視、それは「遠い過去」なのか――韓国・済州島の記憶
https://d4p.world/news/18698/
【取材報告】ルーツを巡る旅、刻まれなかった女性たちの歴史
https://d4p.world/news/18975/
・ 動画
「ウトロ平和祈念館――ウトロに生きる ウトロで出会う」_カルチャーから知る朝鮮半島のことvol.8
https://d4p.world/news/18645/
【現地取材報告】韓国~ルーツを巡る旅――祖母の足取りを追って~ Radio Dialogue(2022/10/5)
https://d4p.world/news/18830/
「済州島の記憶をたどる――4・3事件の現場を歩いて」_カルチャーから知る朝鮮半島のことvol.9
https://d4p.world/news/19016/
「Since3.11 これまでと、これからを写す」
https://d4p.world/since311/
・ウェブ記事
【取材レポート】祈りの場、そして伝える場所に――福島県大熊町、約10年9カ月を経て見つかった娘の遺骨
https://d4p.world/news/14525/
【取材レポート】解体の痛みと、遺していくという選択肢――「ケア」のある復興を(福島県富岡町)
https://d4p.world/news/15386/
・ 動画
【取材報告】福島県大熊町『一人ひとりの命の尊厳』-約10年9カ月を経て見つかった娘の遺骨 _Voice of People_Vol.12
https://d4p.world/news/15333/
【取材レポート】《人間に生まれてきて、よかったです》――ウィシュマ・サンダマリさんが生前綴った言葉
https://d4p.world/news/15543/
【取材レポート】緊急に求められるヘイトクライム対策――戦争によって生まれた街から分断を超える知恵を
https://d4p.world/news/16622/
【取材レポート】「飢餓状態」の数値を見過ごしたこと、救急車を呼ばなかったこと、それは「やむを得ない」ことなのか ――ウィシュマ・サンダマリさん遺族に、国は何を主張したのか
https://d4p.world/news/17843/
・書籍
「外国人差別の現場」安田菜津紀著(安田浩一氏との共著)(朝日新聞出版/2022年6月13日発売)
https://d4p.world/store/16859/
「隣人のあなた__『移民社会』日本でいま起きていること」安田菜津紀著(岩波書店/2022年11月10日発売)
https://d4p.world/store/19163/
ジャーナリズムZ賞(選考委員奨励賞)3件 各賞金5万円(五十音順)
◆『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(文藝春秋)
(受賞者:石川陽一)
(受賞者:栗原俊雄)
◆『日米同盟・最後のリスク なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』(創元社)と『自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実』(集英社)の2冊
受賞者コメント
辻麻梨子/Tansa
本シリーズの取材は、身近な友人からの被害相談をきっかけに始まった。だが着手してすぐ、被害が膨大であることに気がついた。連日ネットでの取引を監視する中で、たくさんの女性や子供の顔を見ていると、いつ自分や家族、友人の写真が見つかってもおかしくないと感じた。
取材で重視したのは、被害を抑止することだ。特にGoogleなどのプラットフォーマーによって、大規模な被害画像の取引が可能となっていることに着目した。これらの企業は世界中にビジネスを拡大し、巨額の利益を上げてきたが、個別の被害には目もくれない。報道機関の収益源にもなっており、追及が難しい新たな権力だ。
際限なく広がる被害を前に暗い気持ちになることもあったが、共に立ち向かう人たちに励まされた。被害者支援に取り組む団体や違法画像を通報する市民、リサーチを担ったホワイトハッカーたち、寄付で取材の継続を支えてくれた人たちだ。何より誰にも話すことのできない被害を語ってくれた当事者に、心から感謝を申し上げたい。被害は今も続く。今後も諦めずに報道を続ける。
Dialogue for People
Dialogue for PeopleはNPO法人として活動し、戦争・難民・マイノリティ・人権などをテーマに世界各地で取材を行い、記事や動画など多様な形態で発信しています。
2022年度は、ウクライナにてロシアの侵攻以前から差別に直面してきた、少数民族ロマや性的マイノリティの人々、中東のクルド自治区やシリアなど、世界の関心が集まりづらくなっている地域で戦禍に疲弊する人々などへの取材を行い、その現状を伝えました。
今回、個別の発信や所属する個人ではなく、弊会の組織運営全般をご評価いただけたことは、今後の事業を行っていく上でとても励みになりました。
引き続き、大手メディアの報道では取り上げられにくい声を、ニュース性に関わらず取材し、人々の「無関心」を少しでも「関心」に変えることを目指し、よりいっそう活動に尽力してまいります。
石川陽一
ジャーナリストは孤独だ。他人の内側へ入り込んでいくのは、いつも怖い。返り血を浴びることもある。その重みを背負い、引きずって生きていかねばならない。
もちろん当事者の悲しみは取材者の比ではない。その事実に改めて絶望する。「いじめの聖域」の主人公である大助さんとさおりさんは、最愛の息子・勇斗くんをいじめ自殺で失った。彼の幼いころの話をする時、2人はいつも優しい笑顔を浮かべる。
ところが、話題が別離となった日へ近づき、過ぎて現在へ向かうにつれて、顔は曇っていく。その沈痛で複雑な面持ちは、私の稚拙な文章力ではとても全てを表現できない。
本当は穏やかに生きていくべき人たちだった。永遠に癒えぬ傷を負ったところに、部外者である私が現れ、取材という形でそれをほじくり返す。人にあんな表情をさせてまで、書くべきことなどこの世にあるのだろうか。自問自答しながら本を作った。
2人は迷いを見透かすかのように、いつもこう言った。「私たちは、もう勇斗と同じように苦しむ子供を見たくないから語るんです」。その思いが認められたようで、今回の受賞はとても嬉しい。
栗原俊雄
マスコミの戦争報道には文法がある。戦争体験者の悲惨な体験を聞き出し、「戦争だけはやってはいけない」というコメントで締める。私はこの文法を守らない。戦争が「昔話」のように感じられてしまう恐れがあるからだ。第二次世界大戦の戦闘は大日本帝国の敗北で78年前に終わった。しかし戦争の苦しみは終わらなかった。たとえば保護者を奪われた戦災孤児、戦地で地獄を体験した元兵士らのPTSD。また日本政府は元軍人軍属には今日まで累計60兆円の援護や補償をしながら、民間人にはほとんどしてこなかった。差別された民間人は今も補償を求めて闘っている。戦没者の遺体・遺骨は100万体以上が行方不明だ。戦争になったらどれだけ多くの人が深く長く広く苦しむか。その現実を提示していくことが、新しい戦争の抑止力になる。私はそう信じている。今回の受賞を励みに、「一年中8月ジャーナリズム」の「常夏記者」として、他の記者がしていない「戦争報道」を続けて行きたい。
布施祐仁
ジャーナリストとして平和・安全保障問題を追いかけて20年余になる。この2冊は、20年余の活動の集大成のつもりで書いた作品である。
この2冊が主題としている「日米安保体制(日米同盟)」と「自衛隊の海外派遣」は、これまで日本の安全保障に関して論争の的になってきた2大テーマである。共通するのは、日本政府の情報公開が不十分なばかりか、政府が望む政策を推進するために一貫して事実とは異なる説明がなされてきたことである。正確な情報が示されなければ、主権者である国民は適切に判断することはできず、安全保障政策は真に民主主義的なものにならない。
この「大きなボタンの掛け違い」を直すことが自分の仕事だと思い、構想から10年以上の時間をかけて取材し書いたのがこの2冊である。
私が常に肝に銘じているのは、「戦争の最初の犠牲者は真実である」という言葉だ。きな臭い世界になってきたが、この受賞を励みに、これからもジャーナリストとして少しでも平和に寄与できるよう微力ながら力を尽くしていきたい。
選考を終えて
個人誌などの場合、「3号雑誌」といって4号まで続かない例が少なくありませんが、おかげさまでジャーナリズムXアワード(以下、JXA)は第4回を迎えることができました。まだ無名に近いJXAに、今回もたくさんのご応募をいただき、心より感謝申し上げます。これまで以上に力作ぞろいで、審査は難航しました。プロセスは前3回と同様、当基金の運営幹事5名による一次選考で二次選考に進めるノミネート候補を絞り込み、外部有識者3名を加えた二次選考でX、Y、Z賞合わせて5件を選定しました。
何をもって「力作」と見るかは人によって異なるでしょうが、注がれた時間と労力、そして伝えようとする熱量の点で、文字どおりどれが受賞してもおかしくありませんでした。「マス」のつくメディアが衰退の波にもまれ、貧すれば鈍する残念な様相を強める中、日本のジャーナリズムは底堅いと元気づけられましたし、若い世代が人生を賭ける仕事として“再発見”する兆しも見えます。JXAは引き続き、ジャーナリズムの蘇生を、そして新たなジャーナリズムの芽吹きを、後押ししていきたいと思います。
応募対象期間の2022年を振り返ると、2月にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、さまざまな面で世界を揺るがして、いまもその影響下にあります。7月には安部元首相が暗殺され、それをきっかけに旧統一教会と政界との長年にわたる癒着や、信者および二世信者、その家族の苦境が少しずつ明らかになってきました。国内では、東京オリンピックをめぐる汚職の追求が進み、岸田政権下の不祥事による辞任・更迭が呆れるほど繰り返された年でもあります。そして前年に輪をかけて、台湾と九州とのあいだに連なる琉球弧の島々の軍事要塞化が強引に進められ、現在に至ります。
おのずとそれらを反映した応募案件が過半を占めましたが、もっと射程の長い仕事や、日本社会の深層を探る作業にも独特の光を放つものがありました。二次にわたる選考過程で、昨年、JXAらしさの一要素として共有できた「未完成で粗削りでも伸び代(しろ)を応援する」ことに加え、「構造的に埋もれていたり隠されていたりするものを掘り起こす、孤立しがちな努力を支える」こともJXAの重要な役割ではないかと再認識しました。
JXAの運営母体であるジャーナリズム支援市民基金は、ジャーナリズムに関わるプロジェクトの助成を設立目的とし、「ジャーナリストではないけれども多様な社会活動の経験豊富な一般市民がジャーナリズムを応援する」という趣旨のもとで運営されています。JXAの選考に「助成のような授賞」の意図が滲み出るのもおかしくありません。
選考側の役得は、毎回素晴らしい作品や成果物に出会えることです。今回、特に心に残ったのはZ賞受賞作の「あとがき」にある次の言葉でした。この言葉は戦争だけでなく、また新聞ジャーナリズムの役割に限らず、“学習しない組織”としか思えないこの国が未清算のまま積み残し続ける、すべての問題・課題について当てはまるのではないでしょうか。
「私は、新聞ジャーナリズムの最大の役割は、国家に二度と戦争を始めさせないことだと考えている。国家、為政者が始めた戦争による負の遺産の勘定書きは、国策決定にかかわることのできない庶民に回される。そして永遠に清算できない。戦争は未完なのだ。その事実を具体的に伝えることが、新しい戦争を防ぐ最大の抑止力になると、私は信じている。」(『東京大空襲の戦後史』より)
結びにもう一点、「2022年の重大事件に旧統一教会にまつわる問題群が明るみに出たことを数えるなら、その最大の功労者である鈴木エイトさんの受賞がないのはなぜ?」という疑問にお答えします。鈴木エイトさんについては2022年10月刊行の著書『自民党の統一教会汚染――追跡3000日』(小学館)を筆頭に「統一教会と政界の癒着及びカルトの2世問題」の推薦があり、当然のごとく一次・二次とも最高評価に近い授賞の有力候補でした。しかし委員一同、熟慮を重ねた末、上記のようなJXA特有の役割に照らしたとき、すでにいくつもの賞に輝き、社会的認知も十二分に受けた同案件の顕彰は、文字どおり屋上屋を架すことになると判断しました。受賞に漏れた案件に言及するのは例外的ですが、鈴木さんの大きな功績を讃えつつ、資金面での力不足もあって賞外とせざるをなかった点、ご理解いただければ幸いです。
以下、お寄せいただいた全エントリーのそれぞれに結実した問題意識と真摯な活動に深く敬意を表しつつ、5件の授賞に込めたものを要約します。
(※ なお、資金と作業負担の両面から、第5回以降を隔年開催することにしました。したがって、第5回ジャーナリズムXアワードは、2023~2024年の2年間を対象期間として2025年春に公募します。ただし、谷間の期間に何らかのイベントなどを開催する可能性はあり、その際はJXAサイトやSNSでお知らせします。引き続きご注目ください!)
【X賞】
「誰が私を拡散したのか」
〈辻麻梨子/Tansa〉
違法に入手した性的な画像や動画が、一見無害なGoogleやAppleのアプリを通じネット上で広く拡散・売買されていることを、知人の被害をきっかけに日本で初めて本格的に追及する連載。「闇に葬られている大きな問題を果敢に取り上げた」(選評より)との評価が高く、対象期間の2022年内に発表された記事は出だしの5回のみで未完である弱点も、同じ非営利ジャーナリズム組織の所属記者による2年連続受賞となるハードル(運営側の抵抗を含む)も乗り越えた。被害者にとっては“魂の殺人”とも言われる事態を野放しにすまいと、実名・顔出しのリスクを冒しながら、心ない加害者と大小プラットフォーマーの双方に立ち向かう若い記者を応援することは、本アワードの存在意義と重なる。連載は現在も継続中で、成果に期待したい。
【Y賞】
メディアNPO「Dialogue for People」の組織運営、及び戦争・難民・マイノリティ・人権などをテーマとする一連の発信
〈Dialogue for People〉
「さまざまな表現方法による『伝える活動』を通して、世界の『無関心』を『関心』に変え、対話の礎を築く」(同NPO「ミッション」より)という役割を果たすために、著書・訳書などの紙媒体はもちろん、自らのウェブサイト、フリーマガジン、PODCAST、SNS、ネット寄稿、写真・動画作品、テレビ・ラジオ出演など、手の届くあらゆる形で発信を試みる「メディアミックス」の手法と、内容の高いクォリティは、本アワードが評価のめやすに掲げる「コンテンツと器の両面における進化/深化」や「(その)両面のシナジー(相乗効果」に合致する。徹底して社会的弱者の声に耳を傾け、関心の集まりにくい問題を掘り下げる姿勢を崩さずに活動を続けてほしい。
【Z賞(選考委員奨励賞)】(3件)五十音順
『いじめの聖域 キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録』(文藝春秋)
〈石川陽一〉
いじめに起因する自死の一例を、遺族を尊重しつつ丁寧に追うことで、学校、県、メディアにまたがる問題の構図を炙り出した力作。大手通信社に所属するとはいえ、「若手とは思えないほど手堅く大量の細かい情報を丹念に重ね、まとめていく手腕」(選評より)が高評を得た。副題から特定宗教の問題という印象を与えかねないが、事実を直視せずに「祈り」で煙に巻こうとする特徴を除けば、宗教と関係なくほとんどの組織に内在する自己保身と隠蔽体質が次々と明るみに出る。ちなみに、著者は本書刊行後、その内容を理由に当時の勤務先の通信社からハラスメントに近い扱いを受けており、著者がそれを訴える形で係争中。
『東京大空襲の戦後史』(岩波新書)
〈栗原俊雄〉
20世紀半ばの戦争をめぐり数多くの調査・証言・報告・著作などが積み重ねられてきた中、地味で埋もれがちであるにもかかわらず社会正義の観点からは看過しがたい空襲被害者の無補償という問題を取り上げ、「史実とテキストと記憶と現在の出来事を丁寧に、バランスよく、わかりやすくまとめ」(選評より)ている。著者は大手全国紙の記者だが、いわゆる「八月ジャーナリズム」とは一線を画し、「国家に二度と戦争を始めさせない」(「あとがき」より)責任を背負い続ける矜持に敬意を表したい。
『日米同盟・最後のリスク なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』(創元社)と『自衛隊海外派遣 隠された「戦地」の現実』(集英社)の2冊
〈布施祐仁〉
組織の後ろ盾を持たないフリーのジャーナリストが、情報公開請求を主な手段に、「政府が否定できない公式の事実を積み上げることによって問題を検証し……だれでも納得できる理論性と道義性を貫きながら、きちんと『ではどうあるべきか』という道筋も見せてくれる」(選評より)。保革や左右のイデオロギーにとらわれず、平易な言葉で、いま日本人がもっとも真剣に熟慮すべき問いをいくつも提示していて、新たな戦争の準備にひた走る日米政府が一番読ませたくない2冊かもしれない。
ジャーナリズム支援市民基金 第4回ジャーナリズムXアワード選考委員一同
上記のほか二次選考にノミネートされた案件(応募順)
〈國崎万智/ハフポスト日本版〉
鈴木エイトによる「統一教会と政界の癒着」及び「カルトの2世問題」
〈鈴木エイト〉
〈島守会(Shimamori-kai)〉
〈廣瀬智之/RICE MEDIA〉
※選考対象の中で代表的な記事にリンクしています。